リハビリ検査紹介

在宅で介護が必要ならこの評価は行うべき!

HCS(Home Care Score):在宅介護スコアとは?

在宅での介護を必要とする可能性を予測することができる評価バッテリーであり、全16項目からなります。実際の介護能力に関すること、介護負担や介護の意欲を観察することになります。

以下の2つの要因からなり、21点満点となります。

・在宅生活のための介護能力に関する要因(7項目10点)

・介護負担に関する要因(9項目11点)

介護が必要な方にとって自宅で生活し続けるためには家族、介護者の存在は欠かせないです。身体的、心理的な疲弊により在宅の継続が不可能になることも多いため急性期や回復期で働いているスタッフさんにもぜひ、実施して欲しい評価です。

検査のポイント

・独居患者、利用者の場合は評価の対象としません。しかし、一部では独居の場合、介護者の項目は0点として評価を試みることもあるようです。

・基本的には0点もしくは1点で採点されますが、「異常行動」は0点、もしくは2点、「患者の闘病意欲」は0点、1点、2点、「介護者の介護意欲」は0点、2点、4点の3段階で採点されます。そのため、この3つの項目に関しては点数の配分が大きく、特に注意を払って評価する必要があります。

・「介護を代われる者」は介護サービスを含まず、数日間介護できる家族を指します。

・介護者は病気でない場合も、高齢で介護が十分にできない場合は「病弱」とします。

・「公的年金以外の収入」は本人家族の生活に必要な勤労収入や資産があるかをみます。また、生活保護や公的年金のみの場合は「なし」とします。

・「異常行動」は認知症などに伴う行動異常で幻覚、せん妄、興奮を指します。

・「患者や家族の意欲は」医療者が主観的に評価して記載します。

解釈・予測

評価結果から以下のような事が言えます。

活用方法

活用方法は大きく3つと考えられています。

・在宅ケアの適応判定

在宅ケアの可能性や困難度を評価するツールとして、在宅ケアの適応判定に役立ちます。スコアが11点以上であれば、可能と考えられています。ですが、あくまでも参考値であるため、本人やご家族さんがどのような在宅生活を送りたいのか、想像しているのか確認する必要があります。

また、回復期リハビリテーション病棟など積極的に自宅復帰を推進する施設でも有用です。中にはFIM(機能的自立度評価法)よりも自宅復帰に対する予測精度が高いという報告もあります。

・在宅ケアの計画立案

在宅生活の計画立案にも役立ちます。各項目を分析することで「介護力の強み、弱み」を把握することが可能です。スコアが低い場合はどの要因が在宅ケアを行う上で障害となっているのかを特定することができます。「ADLに関する項目」「医療処置に関する項目」「意欲に関する項目」は向上しやすいという報告もあります。

・在宅ケアの評価、見直し

在宅生活が長い場合や何らかのイベントにより変化が起きた場合に評価、見直しにも役立ちます。評価を定期的に実施することでどのスコアが向上したのか、低下したのかを把握し、在宅ケアの継続性を向上させることも可能です。

以上、3つが活用方法となります。

「異常行動」「医療処置」は看護師を中心に熟知されている分野であり、「介護を代われる者」は社会福祉士やケアマネジャー、相談員の得意な分野でもあります。他職種が連携する際に活用される評価ツールですね。

注意点

脳血管疾患や運動器疾患の患者さん、利用者さんでの報告もありますが、わずかな知見にとどまっています。 この評価はあくまでも在宅での介護力を様々な視点を包括したものであるため、純粋な同居家族の介護力を図ることは出来ませんね。

まとめ

・HCSは、在宅介護スコアといって、家族介護力を評価するツールである

・21点満点の評価法で、在宅生活のための介護能力に関する要因と介護負担に関する要因からなる

・在宅ケアの適応判定、計画立案、評価・見直しに活用できる

・一般的には11点以上が在宅介護可能なカットオフ値であるが、患者や家族の希望や意思決定も重視する

・脳血管疾患や運動器疾患の患者にも適用できるが、知見は少ない

ABOUT ME
Brainジョージ
男の子2人のパパ。2014年に理学療法士免許を取得。さらに、2019年には脳卒中認定理学療法士の資格も取得する。病院では、回復期、維持期で主に脳卒中や神経難病の患者さん中心に関わる。現在は訪問看護ステーションで働いており、在宅生活を送る利用者さんの生活をサポートする。リハビリテーションに関わる論文の紹介や理学療法の評価方法の解説、そして神経生理学的な内容に特に焦点を当てた脳機能に関する執筆活動を行っている。趣味はお寺や城巡りで、特に国宝である松江城を推し。