歩くための機能

安全で楽になる!歩行介助のポイント

年齢を重ねるたびに、徐々に足の筋力が弱ってきた感じがする・・・

以前に転倒したことがあるので、なんとなく心配・・・

歩行を介助する際にどうすれば安全に介助できるのか、また介助者側にとっても楽な歩行介助の方法があれば知りたい・・・

そんな介護の現場でお悩みの方に向けて、この記事では、

・歩行介助の種類

・歩行介助をする前に気をつける点

・歩行介助中に気をつける点

についてまとめ、歩行介助をする際にチェックしておくべきポイントが分かるようになっています。

一部(後半)で難しい内容もありますが、ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです。

歩行介助の種類

見守りでの歩行介助

歩行介助の中でも、初期段階で必要になるのが見守り歩行です。杖などを使って、自身で歩行をする能力がある方を対象に行います。

介助者の不安定になりやすい場所に位置し、主には斜め後ろから見守ります。介助者がバランスを崩しそうになったら、すぐに支えてください。

言葉通りのそばで見守るだけでなく、口で指示したり注意を促すこともこの見守り歩行介助に含まれます。

左右いずれかに寄り添った歩行介助

見守り歩行よりも、やや密着した状態で介助者の横に立ち、一緒に歩きます。近すぎず離れすぎず、寄り添うように要介護者の脇に右腕を差し込み、左手で相手の左手を軽く握ります。

※原則的には、要介助者の利き手の逆に立ちます。(左利きであれば右側)

※麻痺のある方であれば、麻痺をしている方に立ちます。

前から手を引く手引き歩行介助

要介護者と向き合って、両手をとりながら、歩行をしていくことが、手引き歩行介助です。メリットとしては、要介護者の様子を確認しながら向かい合い歩行をする為、前後への転倒を防ぎやすい点です。

介助者が後ろ向きで進むため、前方の様子が確認出来ない点がデメリットです。

バランスを崩してしまい、共倒れをするケースもある為、長距離の歩行での介助には向いていません。十分に進行方向の障害物には注意した上で、介助することが重要です。

手引き歩行のポイントとして、3点あります。

・正しい立ち上がり方をすること。

・手の位置は前後も高さも変えないこと。

・重心移動を伝えて足の運びをスムーズにすること。

以上の3点を意識しながら、正しい手引き歩行介助を行うことが重要です。

後ろに立って支える歩行介助

要介護者の背中側から支えるという方法もあります。メリットとしては要介護者にとって前が見やすいこと、足が出しやすくなることが挙げられます。

要介護者の顔や表情が見えなくなるのがデメリットです。

疲労度や訴えに気づきにくいため、動きを予測することが難しく、介助として十分支えられない可能性もあります。手引き歩行と同様に長距離の歩行介助には向きません。しかし、前方からの手引き歩行ではなかなか足が出ない、と言う方に対しては一度試してみるのもアリだと思います。

ここまで、歩行介助の種類について4つの方法をご紹介しました。
いずれにしても、介助する側が「かなりの力を要する状態」であれば、その方法は一度見直した方が良いと思われます。杖を使うとか、歩行器を使うとか、一度に歩く距離を短くしてみるとか。

また、この後で紹介する歩行介助のポイントも併せてご確認ください。

歩行介助をする前に気をつける点

どこまで歩くのか?(場所や距離)

歩く介助をする場所を事前に確認する

・屋外なのか

・屋内なのか

・歩く道は整っているか(凸凹していないか、傾いていないか、滑りやすくないか)

・床の材質はどんな感じか(カーペットで足をとられやすい、滑りやすいフローリングなど)

・障害物は無いか(コード類が床に出ていないか、通路の幅など)

などなど。

歩く介助をし始めてしまうと、あとになって障害物をどかすことが出来ないので、あらかじめ確認して最低限の通路の広さは確保するようにしましょう。

歩く際の履物

靴や服装の種類によっても転倒リスクは上がります

靴については、サンダルやスリッパのようなかかとのないものは避けましょう。重たい靴も足に疲労感を与えてしまうので避けた方がいいです。

利用者の足のサイズにあった、軽くて滑りにくい(滑り止めのついたもの)を選びましょう。

服装については、ズボンの丈が長すぎるものは避け、利用者のサイズにあったものを選択してください。

杖や福祉用具の使用有無

補助器具の定期メンテナンスをしっかりと

現在、多くの高齢者が歩行を助けるために杖や歩行器などを利用しております。補助器具のメンテナンスが不十分な場合、事故や怪我につながる恐れがあります

杖なら、滑り止めのゴムが劣化していないか。歩行器なら、ホコリが詰まってタイヤが回りにくくなっていないか。定期的にチェックするようにしましょう。

併せて福祉用具についてまとめたこちらの記事もお読みください。

そもそも歩く目的は何か?

そもそも歩く目的はどういったものなのでしょうか?

移動するための手段は「歩く」だけではありません。特に屋外では無理に歩行をしようとして転倒すると大きなけがをするリスクも高いです。屋外を安全に移動できる手段としてシニアカーや電動車椅子なども挙げられます。最近では見た目がスッキリ、スタイリッシュなタイプのものもありますので、男性の方が使っていらっしゃる光景もよく見かけます。

本人にとっても、介助者側にとっても楽な歩行の方法は何か?

なるべく歩くようにしないと足の筋力が弱ってしまうという理由で歩行介助を行う場合もあるかもしれません。しかし、そのために無理をして歩行介助をして歩いたとしても、本人も介助する側も疲弊してしまうケースもあるかと思います。リハビリ目的で歩くのであれば、安全に運動がしやすい環境にした方が良いと思いますし、リハビリの専門職(理学療法士など)に見てもらうのも選択肢の1つかと思います。

歩行介助中に気をつける点

歩くという動作の仕組み

 

重心と支持基底面

ここからの話は少し難しいかもしれませんが、とても重要な部分ですので、意識してもらえれば様々な介助の場面で役に立つのではないかと思います。

重心について

重心(じゅうしん)という言葉は聞いたことがあるでしょうか?
重心の位置に近いところを支えるようにすれば、より少ない力で支えることが出来るようになり、感覚的に楽だと感じることが出来ると思います。

歩行介助の際には必ず立位をとっていると思いますが、では立った時の重心の位置はどこでしょうか?

ちょうどおへその少し下あたりに、立位時の重心位置があります。

つまり、腰の部分を支えることで、より少ない力での介助が出来るようになる、ということになります。
実際に腰は容易に持つことが出来ないため、脇の下あたりを支えることも重心に近い位置なので良いと思います。

支持基底面について

支持基底面(しじきていめん)というのは、物体を支えている底面のことで、立ったり歩いたりする際の支持基底面は「左右それぞれの足のウラと、その間にある面積」のことです。

上の図では、ちょうど赤い線で囲まれた範囲を支持基底面と言います。

この支持基底面ですが、狭い場合と広い場合はどちらが安定しているかというと、広い方が安定することとなります。

例えば、杖を使っている場合の支持基底面はどうなるかと言うと、

杖をつくと、支持基底面が広がる

黄色の線で囲まれた範囲となり、杖を使うことでその分だけ支持基底面が広がることになります。
これは手引き介助した場合も同様で、前から手を引くことで前方に支持基底面が広がる、ということになります。

結論

上記に挙げた支持基底面の中に重心があれば、安定して立っていられることになりますが、歩くとなると、この支持基底面の中で重心を前方向に移動させていくことが必要になります。

つまり、重心と支持基底面について意識しておくことは、歩行介助を行う場合にとても重要な要素ですが、まとめると以下のようなポイントが大切となります。

・なるべく重心(おへその下あたり)に近い箇所を支えた方が、少ない力で介助が出来る

・支持基底面を広げた方が、安定性が向上する

・歩く中では足を前に振り出す時や向きを変える時などでは、一時的に支持基底面が狭くなるため、より注意するようにしておく

また、安定をとるのか、動きやすさ(歩く効率)をとるのか、というのは実は反比例の関係にあって、悩ましい問題でもあります。

たとえば、
重心を低くして支持基底面を広げた方が安定性は向上しますが、速くは歩けません。
反対に、足が長く背の高い人は歩幅が長くて速く歩けますが、重心の位置が高くなるため不安定になりやすく、より筋力などが必要になります。

この重心の位置(高さ)と支持基底面のバランスは、ひとりひとり適正な程度があるかと思います。その方に合った姿勢や方法で構わないと思います。歩き方は人それぞれで良いと思いますし、それに合わせて歩行介助の方法も様々あって、このやり方じゃないとダメということはありません。

まとめ

今回の記事では、「歩行を介助する際にどうすれば安全に介助できるのか」や、「介助者側にとっても楽な歩行介助の方法があれば知りたい」といった要望に沿った内容についてまとめてみました。

内容的には難しい部分も多くあったかと思われますが、よく分からなかったという方や専門にお任せしたいという方は、動作分析の専門家である理学療法士に相談してみるのがオススメです。

まちの歩行分析室ARUKUでは、病気やけがをしていない、予防の時期から理学療法士に相談できる場所として2022年6月にオープンする予定です。


*この記事内で使用した画像に関しては、
「歩行分析と動作分析」藤田保健衛生大学リハビリテーション部門発行物より抜粋させていただきました。