はじめに
今回は保険外リハビリテーションサービスであるMEZASUの理念について説明したいと思います。ですが、ただ理念を説明するだけでなく今の日本の社会保障制度に関しても触れながらお話ししたいと思いますので最後まで読んでいただけるとありがたいです。
現状の保険制度と目標
以下に介護保険法の第一条(目的)を記載します。
介護保険(介護保険法第一条 (目的))
加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うことを目的とする。(一部抜粋)
これは介護保険の目的ですので非常に重要な内容です。この文章からはどのような方(対象者)にどこまで(目標)サービスを提供するのかが抽象的ではありますが、読み取ることが出来ると思います。もちろん「要介護状態」といっても人それぞれであるため、「自立した日常生活」は個々により異なります。
このように日本には介護保険制度やここでは記載していませんが健康保険制度が存在します。ですが一方で日本ではこの社会保障制度を支えることが困難となっています。
国連によると、65歳以上の人口に対する25~64歳までの現役世代の人口の比率を示す「潜在扶養率」が、2020年の推計で日本が1.8と世界で最も低いと発表されています。(2人にも満たない現役世代が1人の高齢者を支えている。世界平均は5.3)現役世代は社会保障制度を通じて高齢者を支えていますが、その負担が重くなっているという現状があります。これは連日のように報道されていますので、感覚的にでも知っている人が多いと思います。
このような背景もあり(もちろんこれだけではないが)、令和3年度の介護報酬改定では「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による指定介護予防訪問看護(要支援1.2)の利用を開始した日の属する月から起算して12月を超えて理学療法士 、作業療法士又は言語聴覚士が指定介護予防訪問看護を行う場合は、1回につき5単位を所定単位数から減算」が決定しました。つまり、「長く続けると報酬を少なくするぞ!」ということです。ただ、これは制度の存続を考えると仕方がないことであり、これでもむしろ業界に配慮された改訂だと感じています。
様々意見があると思いますが、「要支援」の方に対して12ヶ月以上、保険内のリハビリテーションを提供することは理学療法、作業療法または言語療法を開始する際の「目標」が曖昧であったと思われてもしょうがありません。もちろん、予測した能力まで向上しない場合もありますがいつまで続けるのかを考え、場合によってはリハビリテーションからケアに変更する必要があるのだと思います。
そもそもリハビリテーションとは?
WHOの定義
「医学的,社会的,教育的,職業的手段を組み合わせ,かつ相互に調整して,訓練あるいは再訓練することによって,障害者の機能的能力を可能な最高レベルに達せしめることである」
とされています。
少し難しいですが、リハビリテーションは4つの手段を用いて行われるという事がわかります。
医学的、職業的、教育的、社会的リハビリテーションと4つの手段・分野がありますが、今回は医学的リハビリテーションと社会的リハビリテーションに焦点を当てたいと思います。
医学的リハビリテーションは、医師の指示のもとで理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、臨床心理士などといった専門職によって行われるリハビリです。主に病院や診療所で行われ、ひとりひとりに合ったリハビリテーションの計画を立てて身心機能の維持、向上を目指します。
社会的リハビリテーションは社会生活を送る上で必要となる外出や公共交通機関の利用練習などといった生活支援や、相談機関の活用方法や利用できる制度について学ぶことなど、その人のニーズを満たしつつ可能な限り豊かな社会参加ができるように支援、訓練する活動を社会的リハビリテーションと言います。
一般的にみなさんが想像される「リハビリ」は医学的リハビリテーションであると思われます。説明したようにみなさんが理学療法士や作業療法士または言語聴覚士による「リハビリ」を受けようと思うと医師の指示が必要で医療保険や介護保険を利用して受けることになります。
ただ、現場ではこの医学的リハビリテーションと社会的リハビリテーションの境界が曖昧です。
【現状の保険制度と目標】にも記載した通り、「自立した日常生活」は個々によって異なります。屋内で過ごすことが主で外出の機会がほとんどない人もいれば、活動的で日課のように外出することがいる人まで様々です。
各制度で決まっていれば簡単な話です、例えば「屋内は保険内、屋外は保険外」「外出練習が一回までは保険内」などです。ただ、その決定には根拠がなく簡単に制度化できる話ではありません。
他の分野では保険内サービスは「必要最低限」としてそれ以上は保険外サービスと分けられているものもあります。例を挙げると「眼科のレーシック」「歯科のインプラント、矯正」「看護師や理学療法士による旅行支援」、「看護師による病院受診同行」などです。どれもした方がいいけど「必要最低限」のサービスなのかと言われるとそうではありません。
「リハビリテーション」は境界が曖昧な分野であるからこそ「目標」「期限」を決めて継続できるサービスを目指すことが重要なのではないでしょうか?
「MEZASU」の名前の由来
私たちは保険外リハビリテーションサービスとして「MEZASU」というサービスを展開しています。【現状の保険制度と目標】【そもそもリハビリテーションとは?】でも記載した通り、リハビリテーションには「目標」が重要です。この「目標」が漫然としたリハビリテーションを生まない役割を果たします。
私は理学療法士の養成校を卒業し、広島県の回復期リハビリテーション病棟がある病院に入職しました。主に骨折や脳卒中の方を中心に理学療法を提供しており、多くの人が自宅に帰ることを目標としていました。「自宅に帰るためにどのようなことが必要なのか?」を患者さんや関係者と話し、そのために必要な動作を練習、必要な福祉用具の導入、必要なサービスを導入の提案をすることによりそれを実現しようと努めてきました。
病院で理学療法を受けておられる方の絶対的な目標として記載したように「自宅に帰ること(さらに目標は細かく設定されるが大枠として)」があります。在宅復帰率と言われる入院中の患者様が在宅(居住系介護施設等も含める)に復帰した割合が地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟では算出され、施設基準の一つとして病院では意識されます。患者さんも「家に帰りたい」という思い、意欲が高い人ほどなんとか自宅に帰る人が多いような気がしていました。実際に回復には意欲が大きく関係します。
また、「集中的リハビリテーションによる機能回復とADLの向上」を目的に運動器疾患の方には最大で90日、脳血管疾患の方には最大で180日の期間と期限を決めてリハビリテーションを実施します。これは漫然としたリハビリテーションを生まないために非常に有効だと思います。
一方で患者さんや利用者さんは期限を決められると見放されたような印象を受ける方もいると思います。一部批判的な意見もあると思います。ですが、「必要最低限」の保険制度では当たり前のことかもしれません。生活期においては現時点では違います。現状では病院を退院した後は医師による指示があれば無期限で理学療法士や作業療法士、言語聴覚士を始めとするリハ職によるリハビリテーションを受けることが可能です。ですが、これが続くでしょうか?将来を完全に予測することは出来ませんが、可能性は低いと思います。
「MEZASU」では病院を退院した人で、もう少しく歩きたい、今は車椅子だけど歩く体験をもう一度したいという方や病院を退院し1人で自主練習しているけど専門職によるアドバイスが欲しい方、”とにかくリハビリを諦めない、前進したいと感じている人”を対象に期限なく理学療法士によるリハビリテーションを受けることが出来るサービスを提供しています。ただ、続けるだけでなくその名の通り「MEZASU=めざす」と目標をしっかり設定し、そこに向かって前進できるようにお手伝いさせて頂きます。そのために「科学的根拠に基づいた内容」「十分な説明とアセスメント」を意識して対応させて頂きます。この2つのキーワードがどういうことなのか?~なぜ「MEZASU」は目標を大切にするのか?(後編)日本の社会保障制度とリハビリテーションの現状を考える~にて理念の話もしながら説明させて頂きます。