訪問看護

訪問看護ステーションで働く看護師やセラピスト(PT等)に向けたメッセージ

この記事は、訪問看護ステーションを経営している私が、そのステーションの中で働くスタッフ(計10名ほど)へ向けたメッセージとして改めて残そうと思って書いたものです。

うちの訪問看護ステーションだけでなく、数ある他の訪問看護・訪問リハビリステーションで実際に働かれている看護師さんやセラピストの皆さんも一読いただき、ぜひ感想やコメントなどいただければ幸いです。

この記事の目的・いったい何を伝えたいのか?

”単に1人で訪問に行って帰って記録して・・・だけの仕事にならないようにしたい”、というのがまずはあります。

「1人で訪問に行き、誰にも相談せず、誰にも現場の話をすること無く、聞かれたことにだけ答え、そういうワンマンで仕事を完結させることが出来てしまう」のが訪問看護や訪問リハビリの仕事だったりします。
*もちろん多職種連携・コミュニケーション・相談を十分機能させて尽力されている現場もたくさんあると思います。一概に全部がそうとは言えませんが、そういう働き方が出来てしまうし、また実際にしている人も中にはいると思っています。

単に訪問の件数をこなし、売上に貢献し、たったのそれだけで自分の給与が上がるような仕組みにすることは避けたいのです。

訪問看護やリハビリの仕事を通じて、
「自分自身の価値観や世界観を広げ、人間力(のようなもの)を向上させて欲しい」
「様々な思いを抱えながら在宅で生活をしている利用者やその家族に寄り添える器量を備えて欲しい」

そのようなことを少しでも理解して欲しくて、以下長文にはなりますが具体的に書いてみました。

構成は3つです。

1.起業前に書いていた「経営理念」の中身

2.私生活が充実することで活き活きと仕事することが出来る

3.訪問看護/リハという仕事をしていて自分自身が悩むこと、不安になること、モヤモヤすることは必ずある

では、本文にいきます。

1.起業前に書いていた「経営理念」の中身

「経営理念」は本来スタッフには見せず、経営者自身が何を大事に経営を進めるのか?を内に秘めながら経営を進めるためのものですが、

起業前に書いた文章を改めて今読み返してみると、共有しておきたいような内容だったのでまずこれから紹介します。

~以下、経営理念より抜粋~

・単に「訪問看護」を提供するだけではなく、そこに関わる人やサービス内容を徹底的に追及したい
・医療と介護の橋渡し役として、医療のことも介護のことも、兼ね備えた人物を育てることが役割
・病院等で働くよりも過酷な労働環境で責任も大きいため、それに見合った給料体系を作り、事業としても継続させる
・自分自身が関わった利用者に対して、常に何が最善であるかを考えて、良いことを全力で行なうことができる
・従業員1人1人が自律的に、責任感を持って、誠実に行動できるような職場づくり
・従業員がそれぞれ主体的に自分の人生を選択し決定していけるための、選択肢の準備と自己決定を促す取り組みを行う

今から約7年くらい前に作ったものですが、当時からいずれはこんなチームが出来たら良いなと思い描いていました。

2.私生活が充実することで活き活きと仕事することが出来る

以前からうちのスタッフによく言うことですが、

「出勤と退勤の打刻漏れが無いように。もし打刻を忘れたら私まで連絡してください。」

「各スタッフに持たせてあるスマホやタブレットは、休日を含む勤務時間以外には見ないようにしてください。電源をオフにしても良いです。緊急の連絡等は事務所やオンコールで対応しますので。」

「空き時間・休憩時間が人によって違うので、それぞれ相手のスケジュールを見て報告・連絡・相談をするようにしましょう。」

などなど。

私としては、勤務が始まったら仕事に集中し、勤務が終われば仕事からは完全に離れる、という状態をつくって欲しくて、上記のようなことをよく言っています。要は「けじめ」をつけて欲しいということ。

対象者が高齢者や障がい者なので急な対応を要す場合ももちろんあります。そんな場合に時間外でも応対してくれるスタッフには私としても本当に助かりますし感謝です。けれど、そんな急な対応が必要な状態を常態化させてはいけないとも思うのです。おそらくその急な対応に応じている裏側には「犠牲にしている何か」があると思います。だからこそみんなで共有して考えたい。決して1人のスタッフに丸投げして抱え込ませるのではいけない。それはたぶん、その犠牲になっているものが「そのスタッフの私生活だから」だと思うのです。

自分で言うのもなんですが、スタッフ1人1人のワークライフバランスを考慮した働き方設計を実現させています。これはうちのスタッフなら言わずもがななことなので詳細は省きます。それに応じて個々の業務スケジュール量も毎週のようにチェックしています。「もっと訪問に回れるでしょう?」というようなチェックではなく、「余裕のあるスケジュールですか?」「もっと意見交換や相談する時間を取りましょう」「なんなら雑談でもしましょう」というようなチェックです。また後述しますが、スケジュールに余裕が無ければ絶対に出来ないけれど、とても大事なこと(大事にしていること)があります。

将来的に給与アップする事業計画はもとより、もらいたいと思う退職金の話から、保険の話や税金の話、自費の話などを雑談として普段からよくしているのは、個々のスタッフの手元に残るお金を少しでも増やすためであり、お金があれば選択肢が増え、私生活がより充実するようになるのではないかと思うのです(もちろんそれだけでは無いが、私が出来るのはせめてそのくらいしかない)。

休みたいときに休みが取れる、急な欠員が出たとしてもなるべく現場に迷惑をかけないようにする。そんなようなことを強く意識していて、私生活で体験する良いことも悪いことも含めて様々な人生経験が、より自分自身の価値観や世界観、強いては人間力みたいなものの向上に繋がり、結果的に仕事にも必ず活きてくると思っています。

3.訪問看護/リハという仕事をしていて自分自身が悩むこと、不安になること、モヤモヤすることは必ずある

実際に訪問していて、または関係者等と話していて、悩むこと、不安になること、モヤモヤすることはたくさんあるのではないでしょうか?

・自分のアセスメントがあっているかどうか?

・得られた情報の解釈が偏っていないか?

・この目標であっているのか?

・実施しているケア内容/リハ内容で本当に良くなるのか?

・なかなか関係者等が理解/協力してくれない・・・

などなど。

1人で考えても、いつまで悩んでも、なかなか答えは見つからない。

訪問は1人で行うけれども、思考はみんなで出来る。ベストな方法は分からないけれど、よりベターな方法は見つかるかもしれない。

誰かに自分の悩みを話すこと、分からないことを「分からない」と聞くこと、私個人の経験上ではあまり抵抗なくやってきてそれなりに効果があったと実感しているのですが、うちのスタッフの多くは「抵抗がある」もしくは「相談しても効果が無い」と感じるスタッフが多いのでしょうか。あまりみんなに思考してもらおう(聞いてみよう)という相談が非常に少ないのが現実で、私の仕事の1つに、「スタッフが悩んでいることを相談しやすいような職場づくり」があるのですが、現状を鑑みると残念ながら上手くいっていないと言わざるを得ません。

もしかしたら私のいないところですでに相談し解決しているのであれば問題は無いのですが、それでも「いつも決まったスタッフ同士で話していないか?」「もっと色んな人に聞いてみよう」と考えるようになって欲しいなとも思います。これまで散々スタッフにも話してきたことですが、私は現場でどんなことが起きているのか?を知りたくて話を聞きたいと思うような、奇怪な経営者なのかなと自分で思っています。

◎異なる価値観を持つような人と積極的に意見交換しようとしているか?

◎ストレングステストの結果は活かせているか?

◎論理的な振り返り(フィードバック)をどれだけ得ようと自ら行動しているか?

◎感情的な振り返り(吐露、気持ちの整理)をどれだけ自ら行っているか?誰かに話せているか?

そういった「明確な目的」をもったコミュニケーション・相談がもっと活発に行える職場になれば、ただの自己満足なことでは決してなくて、利用者に還元されるものになると思っていて、改めてしっかりと伝えたい内容です。

ちなみにうちの事業所の組織図イメージは以下の通りで、逆ピラミッドのような形をしています。

一般的には立場・権威の順に上からピラミッドのような形になるのですが、うちの事業所が向かう先はあくまで「理想的な在宅生活のための医療的な支援」であり、その役割に近い位置にあるスタッフが上の方に位置し、経営者側はそれを下支えするような位置づけにしています。立場・権威ではなく「役割」で区切り、私はリーダーではなく「マネージャー」というような役割だと自分で認知しています。

「明確な目的をもったコミュニケーション・相談」の時間は、日々の業務スケジュールに余裕がなければ絶対に出来ない(時間外勤務もしくはサービス残業になってしまう)ことですが、たとえ余裕があったとしても「やろうとしなければ出来ない・しないのではないか?」とも思っています。つまり、こういった訪問看護/リハの仕事をしていて自分自身が悩むこと、不安になること、モヤモヤすることを相談することができるスケジュール管理(業務量管理)は出来ているものの、スタッフ側から相談してみるという第一歩を踏み出すこと待ちの状態なのかもしれません。私は私の役割で必要なことを継続しながら、引き続き待ちたいと思います。

この項目でもう1つ付け加えたいことがあります。それは感情の吐露・整理の部分です。

そもそもスタッフに女性が多いということもありますが、それだけではなく、訪問看護/リハという業務に関わる人たちが実に様々な立場や状況であるため、感情が揺れ動くことがとても多くあります。医学は客観的データとともに根拠に基づいて行われる側面がありますが、決してそういった論理的なことだけでなく、その中で感じるどうしようもない感情を吐き出したり整理したりするような時間も必要だと思います。ときには「感情を押し殺して対応しなければならない状況」があるかもしれませんが、それでも事業所内ではしっかりとそういった感情の吐露・気持ちの整理が出来るような、そんな職場にしたいと思っています。

さいごに

冒頭で書かせてもらった、

「単に訪問に行っているだけで良しにはしたくない」

「1人で訪問に行き、誰にも相談せず、誰にも現場の話をすること無く、聞かれたことにだけ答え、そういうワンマンで仕事を完結させることも出来てしまう」

そんなような仕事の仕方では無くて、

「自分自身の価値観や世界観を広げ、人間力を向上させられるような」

「様々な思いを抱えながら在宅で生活をしている利用者やその家族に寄り添える器量を備えられるような」

そんなことを私自身はとても大事にしていて、なるべく少しでも伝わればと思って書いてみました。

もちろん一気に急にはそんな風にはなれない・出来ないと思います。一時は意識して行動してみたけれど、なかなか続かないようなこともあると思います。

でもなろうとしなければ、やろうとしなければ絶対になれないのも事実なので、
まずは今の自分に出来ることから1つずつでも良いので意識して行動してもらえれば嬉しいです。

改めて、
「皆さんはどうなりたいですか?」
と伺いたいと思います。

また教えて下さい。

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