この記事では、実用的な歩行を行うための5つの要素についてまとめています。
この5つの要素を知ることで、
この「自立」と「見守り」を判定する際には、以下の5つの要素を考慮する必要があります。
なるべく図やイラストを用いて分かりやすいよう工夫する努力をしていますので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。
正しい歩行(正常歩行)とは?
歩行とは、足で踏ん張って体重を支える時期(立脚期)と、足を前に振り出す時期(遊脚期)を繰り返すことによって、歩くという動作が行われます。
そもそも、正しい歩行とはどんな状態のことを言うのでしょうか?
正常歩行の定義を調べてみると、
などと書かれていたりします。
では実用的な歩行とは何なのか?
この実用性を決める要素について、考えてみたいと思います。
実用的な5つの要素
実用的な歩行をするために必要な5つの要素とは、
「安全性・安定性・耐久性(持久性)・速度性(スピード)・社会性」となります。
上記5つの要素を総合的に判断して歩行が自立出来るか?、見守りや介助が必要か?という判定をすることが出来ます。
実用的な要素から逸脱すると・・・
この5つの要素が欠けるとどうなってしまうのでしょうか?
一例ではありますが、以下のような状態が予想されます。
1.安全性が欠けた場合
安全性が欠けると、シンプルに「危険」ということです。
歩行で言うと、それはすなわち「転倒」に繋がります。
転倒の要因は実に様々ありますが、
などなど。
こういった現象をたびたび目撃すると、「なんとなく危なっかしい」という印象を抱くと思います。
これが、安全性が欠けている、ということになります。
ただし、筋力が弱かったりバランスが悪かったりしたとしても、ご本人がそれを自覚していて十分注意されている場合は安全性を代替できているとも言えます。
2.安定性が欠けた場合
次に安定性が欠けた場合についてです。
この「安定性」というのは、歩行が不安定かどうかではなく、ムラがどれだけあるかどうか?という部分となります。
といったような部分が「安定性」という要素で、このムラが少ないほど安定(一定水準以上のパフォーマンスが発揮できる)しているということになります。
このムラが大きい場合は、一時の状態で判断せずに様々な場面で検証したり、関わりのある方から情報収集するなどの工夫が必要になります。
3.耐久性(持久性)が欠けた場合
心臓や肺の機能が低下していて体力(全身持久力)が少ない場合は、すぐにバテてしまうことはイメージしやすいかと思います。
上記の他にも、例えば足におもりがついていたら・・・歩くときにはどうなるでしょうか?
足を前に振り出す際に、いつも以上の力(エネルギー)が必要になります。
上記の図のような感じに、身体を横へ傾けて足を出すという、左右への揺れが生じることになります。
実際に足におもりをつけて歩く人は少ないと思いますが、これはまさに足をケガした場合や、脳梗塞などで麻痺が出た際に起こりうる症状の一つです。
こうなった場合にも同じ距離を歩く際に必要なエネルギー量が増えるため、相対的に耐久性が低下することとなります。
4.速度性(スピード)が欠けた場合
ふらつきも無いし、体調のムラも無いけれど、非常にゆっくりとしか歩けないと言った場合も、実用性は低いと言えます。
よくある例としては、横断歩道を渡る際に青信号の時間以内に渡り切れるかどうか?という要素で、1人で外出できるかどうかが分かれたりします。
また家の中では、トイレまで移動する際に間に合うかどうか?という観点で、歩くスピードが十分かどうかを検討したりします。
5.社会性が欠けた場合
社会性が欠けるというのはなんだかイメージしにくいですが、分かりやすく言うと「社会の中で見たときに適合しているかどうか」という部分になります。
例えば、認知症で帰り道が分からなくなってしまう場合、これは明らかに実用的な歩行とは言えません。歩行は何か他の目的を達成するための手段であって、目的(家に帰る)が達成できないと実用的とは言えません。
また身体を大きく揺らしながらでないと歩けない方の場合、狭い通路などでは歩けなくなることもあります。こういった場合も実用性が低いと言えます。
しかし、最近では社会の方が寄り添う形で適合してくれることもあります。帰り道が分からなくなった人に声をかけて一緒に付き添ってくれるとか、狭い通路以外の幅広の通路を作ってくれるとか、そういった社会的な変化で実用性も変化すると言えます。
「自立支援」という視点
ここまでは、実用的な歩行に必要な5つの要素について書いてきましたが、
ではこの5つの要素のうち1つでも欠けた場合は、すべて実用的ではなくなり、「見守り」をしなければならないのでしょうか?
答えは「NO」です。
その方が生活している環境が整い福祉用具などを使うことが出来れば、実用的な歩行が出来るようになるかもしれません。
日本の介護保険法という法律では、「自立支援」という考え方がベースになっており、介護の現場ではよく介護者が「なるべく自分で出来ることは自分でして下さい」と話している場面があります。
しかし、ここには落とし穴があるというか、注意が必要です。
こういったことを介護者はまずしっかりと見定める必要があります。つまり、実用的な5つの要素についてきちんと確認した上で話しているかどうか、です。
「なるべく自分で出来ることは自分でやりましょう」というと聞こえは良いですが、介護をする側の視点に立った場合は「どのような環境や福祉用具などを使えば、介助をすることなく、お一人で実用的に生活が出来るようになるか?」を考えることが非常に重要になります。
この実用的な5つの要素を評価し、対策を考える専門家が「理学療法士」です。
「どうやれば患者や利用者が1人で自立して行えるようになるのか?」、なるべく見守りや介助が無くても動作が出来るような環境設定・福祉用具などの提案が可能です。
理学療法士は近年どんどん増えています。ぜひお近くにいる理学療法士までご相談してみてください。
理学療法士・作業療法士が集まって結成した特定非営利活動法人Re Stepは、広島県福山市で活動をしています。
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いかなる環境や条件下においても、実用的に歩行が遂行できること
歩行は年齢や身体的特徴、精神状態などの影響を受けるため歩き方に特徴(歩き方のくせ)がはっきりとみられることも多い